日本銀行の量的緩和策が為替に与える影響
今週は日本銀行が5兆円の資産買入基金の創設を決定し、ついに事実上の量的緩和に踏み切りました。また米FRBは、年末から来年にかけて数千億ドル〜1兆ドル規模の国債買い入れを検討しているといわれています。日本の5兆円という規模は米国と比べて見劣りしますが、円高に歯止めがかからなければ、今後さらに基金を積み増す可能性があります。
中央銀行が国債を買い入れるという措置は、量的緩和といえば聞こえはいいですが、紙幣を大量に増刷して国の借金をまかなうようなものです。おカネというのは、実はその気になればいくらでも増やすことができるものだったわけですね。紙幣を増発したぶんだけ通貨価値は確実に薄まりますので、インフレ上昇要因になります。
今のところ経済のグローバル化によるデフレ圧力の方が強いのでインフレにはなっていませんが、将来はわかりません。通貨に対する信用の低下を反映して、コモディティなど現物資産に投資資金がシフトし、特に金相場が連日史上最高値を更新していることはご承知のとおりです。
人間関係でもそうですが、信用を得るためには長く地道な努力と実績が必要ですが、築いてきた信用を失うのはあっという間です。しかも失った信用を取り戻すのはなかなか簡単ではありません。紙幣も、発行体である中央銀行・政府が倒れてしまえばただの紙くずになってしまいますが、その紙くずが再び紙幣として価値を取り戻すことはまずありません。
第一次世界大戦後のドイツでマルクが対ドルで7桁以上も下落し、パン1個が1兆マルクとなるほどのハイパーインフレが起こったことは有名な話ですが、この時はレンテンマルクという不動産を担保とした新通貨への切り替えでようやく事態が収拾しました。日本でも第二次世界大戦後、預金封鎖と新円切り替えが行われ、物価が約100倍に上昇したという歴史があります。近い将来ドル札が紙くずとなるとは考えにくいですが、金の果てしない高騰を見ていると、静かな「取り付け騒ぎ」が始まっていると思わずにはいられません。
余談ですが、世の中には「戦争・紛争で暴落した通貨が戦後復興で数百倍になる」との謳い文句で、イラクやスーダンなどの紙幣の購入を持ちかけ詐欺まがいの商法があるそうです。まさか信じる人はいないと思いましたが、国民生活センターには結構相談が寄せられているそうです。失われた信用は容易には戻らない。ドイツや日本でも元に戻らなかったわけですから、そんなうまい話があるはずがないことは、ちょっと考えればわかるはずなんですけどね・・・・。
日銀による量的緩和は為替だけではなく、株、債券、金価格などさまざまな市場価格に影響を及ぼすので、マーケットの値動きには十分注意をするようにしましょう。